ラジオ技術2001年11月号に掲載されたG.G.Preampの紹介
T8の紹介記事と同様、ラジオ技術誌と筆者である丹野氏のご好意により、同誌2001年11月号に掲載されたG.G.Preamp(グリッド接地プリアンプ)に関する記事を転載させていただくことができた。Tube-HiFiチームによるユーザ支援体制や日本語の組み立てマニュアルの改善など、一部状況の変化もあるが、あえて原文で掲載する。ただし、回路図についてはネットでの公開を許可されなかったため、掲載を見合わせた。ご興味のある方はラジオ技術のバックナンバーまたはBruceの著書Audio
Realityを参照していただきたい。
(2003.5 by SN, Tube-HiFi Team)
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以前ご紹介したOTLアンプのメーカー、Transcendent社がグリッド接地方式のプリアンプのキットを売り出しています。ラインアンプですので、イコライザーは含まれません。インターネットでの評判は悪くなさそうでしたが、踏ん切りが中々つきませんでした。それがだんだんと気になって来て、とうとう我慢できなくなりましたので、思い切って購入してしまいました。価格は$499で相当にお手ごろな値段です。梱包・運送料は$60でしたので、これも大変良心的です。
キットは大きく分けて、シャーシー、フロントパネル、プリント基板、取り付け部品で構成されますが、細かい部品はジップ付きのビニール袋入れてあります。
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大手メーカーとは違い、特注の緩衝材などはなく、クッション材で巻いてあるだけでしたが、実質的には十分で、問題なく届きました。
箱を開けて説明書を取り出して見ると、何と日本語で書いてあるのにはびっくりしました。カラーコピーできれいに作ってあります。台湾製のパソコン用機器に付いているような妙な日本語ではなく自然な日本語です。組み立て説明書は工具の説明から始まり、ステップごとに写真が付き、分かりやすくなっています。ただ、ロータリースイッチのストッパー金具の設定の仕方が分かりにくく、頭をしばらくひねりました。これは、写真の中のどの部分を指しているかが分からなかったのが原因です。また抵抗の説明が一つ抜けているので、気をつけなければなりません(最後に残る抵抗を入れればOKですが)。
電源基板の組み立て
ヒューズクリップから始めます。金具の向きを間違えるとヒューズが入りませんから気をつけるところです。次は3個のトランスです。一次側と二次側は間違えると事故になりますので、足の番号をよく確認して取り付けます。説明書の写真をよく見て取り付ければ大丈夫でしょう。整流ダイオードを8個、ツェナー・ダイオードを4個、取り付けますが、白い帯の付いている方向を基板の絵と合わせれば間違いありません。ツェナー・ダイオードは基板から少し浮かせて取り付けると放熱の点で有利です。次に抵抗器の取り付けですが、7個あるのに、6個分の説明しかありませんでした(言っておきましたので近々直るでしょう)。パネルの発光ダイオードにつながるR7(3KΩ)がありませんので、これも取り付けます。
次は、電解コンデンサが6個あります。そして、すでに放熱器に取り付けてある三端子レギュレータを載せたら、最後にヒーター回路用の電解コンデンサと、電源スイッチのノイズ吸収用のフィルム・コンを取り付けます。トランスが重いので作業がしにくいですが、それ以外の半田付けなどは、それほど困難なところはありません。
アンプ基板の組み立て
幾つかのスルーホールの両側に半田を両面より盛るように指定があります。これは接続を確かにするためと説明がありました。次に真空管のセラミック・ソケットを3箇所取り付けます。その次は抵抗を13個取り付けます。パスコンを2個、電解コンを3個取り付けると、この基板は完成です。ここで、部品面からも全て半田付けするようにありますが、これは部品と基板の接続不良を極力無くすためだと思います。基板全体の半田付けする個所は周りが広く、こちらも難しいところはありませんでした。
シャーシへの部品取り付け
まず入出力用RCAジャックを8個取り付けます。右用と左用は色が違いますので、間違えないようにします。全てシャーシーより電気的に浮かせますので、プラスチック・ワッシャーの縁が上がっている方を裏パネルの穴にはまるように気をつけて取り付けます。この際にアースラグは後で配線がしやすいように向きをあわせて取り付けておきます。終わりましたら、すべてのアースラグを線で結んで半田付けしておきます。またシャーシー用アース端子と電源コネクタのアースとを同様につなぎます。回路のアースはシャーシーに10オームを介して落としておきます。入力セレクターに使用するロータリー・スイッチはストッパー金具の取り付け方で回路数を調整できます。ここでは3回路用に調整しておきます。ボリュームも同時に取り付けます。あとで配線しやすいようにピンの向きを合わせてパネルにとめます。次はシャーシーの裏面にゴム足を四つ取り付けます。
ここで、電源とアンプの基板をシャーシーに取り付けますが、0.5インチのスペーサーでシャーシーから浮かせておきます。アンプ基板のアースを入力端子のアースラグ配線と接続します。それからL1からL3、R1からR3と左右チャンネルの3つのラインと入力端子とを順々に接続します。同様にこのラインの反対側で、フロントパネルのセレクタスイッチと3つの左右チャンネルとをつなぎます。これは説明書の写真をよく見た方がよいでしょう。筆者はテスターでチェックしながら行いました。次はセレクター・スイッチからボリュームへつながり、ボリュームからアンプ基板のL1とR1パッドにそれぞれつながります。この部分が本当のアンプ入力となります。100VのAC電源を電源基板につなぐために、電源コネクタと基板のLとNパッドにつなぎます。
ここで、フロント・パネルをシャーシーの前面に取り付けます。ねじは見場のよさからか六角レンチで締めるタイプを使用しています。このパネルには電源スイッチとパイロット・ランプが取り付けられます。ランプはLEDですので、極性を間違えないようにします。電源スイッチにはコネクタ経由でつなぐように指示がありますが、筆者は直接半田でつけてしまいました。この方が安定でしっかりと付くと思ったからですが、後で外すことが簡単でできますので、オリジナルのコネクタを使っておくのもよいでしょう。スイッチと基板のS1パッドとを接続します。最後の配線部分は電源とアンプ基板との接続です。高圧のプラスとマイナス、フィラメント用電源、それからグランド線を同じ名前のついたパッドどうしで接続します。5本接続するとこれで全ての配線が終わりました。シャーシーをしっかり持ってさかさまにして強く振って、半田や線のくずをよく落としておきます。よくシャーシー内部全体を見て、変なところや配線忘れがないかどうかも調べましょう。納得が行ったら、3本の真空管をソケットに挿して、ヒューズを取り付けます。これで完成です。説明書には「すごい! やったね!」とありました。
AC電源をつなぐ前に事故防止のためにもシャーシー・カバーを取り付けておきましょう。面倒かもしれませんが、感電防止と、コンデンサの誤配線による破裂にも備えられます。
回路の説明
電源回路 電源はプレート用の+200V, カソード用の-200V、それにヒーター用の+12Vで、それぞれ独立のトランスを使用しています。高圧電源は120V、50ミリアンペアのトランス出力をダイオードで倍電圧整流をし、100V用のツェナー・ダイオード(定電圧ダイオード)2本直列で安定化をして±200Vを得ています。また、ヒーター用の+12Vは12V出力をブリッジ整流し、三端子レギュレーターで安定化します。約900mA使用します。
アンプ回路
使用している真空管は双三極管12AU7(5814)を3本使用しています。入力信号は3種類から選べます。入力切替スイッチを通った後、50Kオームのボリュームを通り、初段のグリッドに直接入ります。直列の10Kオームは発振止めです。設計者によると、このボリュームは試聴した結果高級ボリュームと差が出なかったので普通品にしたそうです。気になる方は好きなものに替えてもよいでしょう。この段はカソード・フォロワーで、出力はカソード側に出します。負荷抵抗となるカソード抵抗に51Kオームという高い抵抗を使用しています。カソードとグリッドとの電圧関係を保つために、カソード抵抗の下端をグランドではなく、マイナス200Vで引っ張ってあります。次段は2個の三極管が縦に並んでいます。これはよくパワーアンプのドライバー段でよく見る回路に近いもので。信号は初段と共有しているカソードから入力されます。グリッドはグランドに固定されていますので、カソード電圧が高くなればプレート電流が減り、出力電圧が上がります。プレートに接続される負荷は定電流回路です。無信号ではバイアスが5Vくらいになりますので、大体60Kオームくらいの負荷に相当します。出力は直流カット用の1μファラッドのコンデンサを通って出力端子につながります。同時に、この出力信号はフィードバック抵抗である100Kオームと20Kオームで分割され、出力信号の1/6が下側の三極管のグリッドに戻されます。総合ゲインは約12dBで、フィードバックのない裸のゲインは19dBほどになります。周波数特性は数ヘルツから300Kヘルツという広帯域です。このフィードバックをかけることで、非常に静かなアンプができたそうです。
聴いてみた
好みのジャズとクラシックを適当に混ぜて20枚ほど聴いてみました。
最初の印象は管球式プリとしては大変静かなアンプだと思いました。音楽を聞いてみると筆者自作のアッテネータと比較して、少し荒くなりますが、低域がやや前面に出てきますし、迫力と感じるかもしれません。またリアル感がやや薄れ、立ち上がりがほんの少し甘くなりますが、きつい音も減りますので聴きやすくもなります。そんな比較をせずにきけば、スピード感があり、何にでも対応できる、素直なよいプリアンプだと思います。それに値段を考えると競合するものはあまりないのではないでしょうか。相当にお得と言えそうです。音質重視で入力の切り替えをケーブルの挿し替えで行っている筆者の標準システムと比べて、当たり前ですが大変使いやすい。真空管ではありますが、20Vまでドライブできる力を持っていますので、どんなパワーアンプにもつなげられるでしょう。出力インピーダンスも低いので、アッテネーターよりもケーブルを延ばせます。音質もハイレベルのラインアンプですので、満足が行くものです。また選定された部品や回路、シャーシー内の構成から考えて、長期にわたり安定に動いてくれることが期待される、高信頼性の設計だと思います。
まとめ
アメリカの特徴あるメーカーのプリアンプを製作してみました。内容は一見単純ですが、高度な技が見て取れます。一方、組み立てはやさしく、少しはんだ付けの経験さえあれば、どなたにも勧められる内容です。音質は十分ですので、将来に渡ってもそれ程不満が出ないのではないでしょうか。外見はすべてアルミ一色でフロント・パネルも薄く、以前ご紹介したAssemblageの製品と比べると少し安っぽいので(事実値段が安いのですが)、外見より中身という方でないと買えないかもしれません。とにかく、包装紙がきれいでないと嫌がる日本においては成立しない商品企画だと思いました。昔のヒース・キットのように安くてもレベルの高いキットをオーディオ好きの少年(実際の歳が幾つであっても!)に提供したいと言う、設計者の意気を感じる製品です。
--- ラジオ技術2001年11月号
「管球式プリアンプ・キットを組む」
丹野哲男
● 月刊「ラジオ技術」バックナンバー入手先
株式会社 アイエー出版・サービス部 URL: http://www.iar.co.jp/
● Bruce Rozenblit著"AUDIO REALITY"
日本のアマゾンで見つかります。http://amazon.co.jp
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